おもろいおばちゃん
もんじろう号の前に乗っていたえり・峰子号との思い出 第二弾


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私は250ccのバイクに乗るのだが、私が乗るととても大きく見えるらしい。「それナナハン?」なんて訊かれるのはよくあることで、それは私が人より小柄だからだろう。

私のバイクは真っ黒で、おまけにヘルメットも真っ黒で、シールドも黒のスモークなので、それを被って走ってしまうと、私は一個の大きな爆走する黒い鉄の塊と成り、大変攻撃的なデザインを醸し出すようで。

先日、いつも通る国道沿いにあるちょっと気になっていた鄙びたラーメン屋に立ち寄った。

道沿いにバイクを止めた時、店の前には店主らしきおばちゃんと、ご近所らしきおばちゃんが立ち話をしていた。

私がヘルメットを脱いで店に入ろうとすると、「あらあら、いらっしゃいませ」とおばちゃんは一緒に入店してきた。やはりお店の人だったんだ。

おばちゃんは開口一番、
「あなた女の子よね?」などと訊いてきた。

私は常々男っぽい性格なのは自認してきたが、外面で男性と間違えられたのは小学二年の頃、線路でつくしを摘んでいた時に工事のおじさんに「ぼうず、つくしは炒めて食べるのが一番だぞ」と言われて以来だった。

恐らく、上述したような格好だったからそう思われてしまったのだろうが、びっくりしたのだ。自分的にそれは最後の一線であり、外面で男に見られちゃあお仕舞いだと常々思っていたので大変ショックだった。おばちゃんにとって、あんな真っ黒い大きな鉄の塊は女である筈がないという思いこみが、ヘルメットを取った私の顔を見て方程式が上手く解けなくなって出てしまった一言なのだろうとは思うのだが。

「ええ、女です。」
なんてアタリマエの言葉など一生口にしたくなかったのだが答えてあげた。屈辱です。

「あら、そうよねぇ。あなたとっても可愛いからわかんなかったわ。」
とよく分からない答えが返って来、その後おばちゃんは人のプライバシーに関わるような話を根ほり葉ほりと質問してはよく分からない答えを返してくれた。

おばちゃん(以下お)「あなた学生?」
私「いいえ。この間卒業しまして・・・」
お「どこの学校?」
私「○○大です。」
お「あら、そしたらうちの息子の後輩やないの、ラーメン大盛りにしてあげるわね。」
私「あ、どうもありがとうございます。」

お「あなた可愛いから男性にもてるでしょ?」
私「なぁーーーにを言ってるんですかぁ!(おい、さっき男と間違えたのはどこのドイツやねん、っちゅうねん!!)」
ちなみに、その時の私のコーディネイトはスッピンに、古くて伸びたジーンズにユニクロのTシャツにダイエーで買った1000円のジャケットだった。

お「御免やけど、これ、すごい美味しいお水やから自分で入れて飲んで」

トン。と私の目の前に置かれたのは「南アルプスの天然水」と書かれたよく冷えた2リットルのペットボトルだった。ラーメン屋でペットボトルの水を丸まま出されたのは生まれて初めてだった。見渡してみれば客は私しか居ない。忙しくて手が放せない訳でもなんでもないのに、自分で注いでね、ときたもんだ。

よく分からないが、このおばちゃんはよく分からない人だし、周りには私に同意し味方になってくれそうな常識を持った他の客はいないので逆らわず従うことにした。もう一々疑問を持ったりビックリしたりしないでおこう。

ラーメンが出された。最もシンプルなラーメンを注文した筈なのに、おばちゃんの息子の後輩だと言うことで、いつの間にかチャーシューメンになっていた。

ズルズル。あ、けっこうあっさりしてて旨いな。 と思ったところへ

お「バイクは気を付けなアカンでー。」
私「はあ、どうもです。」
お「今日な、○○線(私が走ってきた店の前の国道)でおばあさんが轢かれたんやて。それでおばあさんは内臓出してしもて、もぉ大変やったんやて。」
私「うわ、大変ですね。お亡くなりになったんでしょうか。」
お「さあ、どうやろ。さすがに内臓出してもたら死ぬやろねえ。」
う、、、私は今、おばちゃんの作ってくれたチャーシュー?メンを美味しく食べようとしていたところなのに。まあいいや、旨いからいいや。

食べ終わった。

お「このお水美味しいでしょ」
私「(そりゃミネラルウォーターをわざわざ買って出してくれてるんんだから)ええ、美味しいです。」
お「これね、宮水なんよ。」
私「え?!宮水だったんですか?!」

宮水というのは、兵庫県西宮市の名水のことである。西宮は昔から酒処として栄えてきたのだが、その酒が生まれたのは美味しい宮水があったからこそ、との伝説を私は聞いてはいたが飲んだのは初めてだったので大変感動してしまった。

私「西宮に長いこと住んでましたが、宮水を飲んだのは初めてです。感動しました。ありがとうございます!」
お「そうやろ、菊正宗とか、この水使って作ってるらしいで。」
私「へぇーーーー。そうなんですかぁ!」

それならそうと、先に言えばいいのに。 それならそうと、どこかに「この店の水は宮水です」と書いて貼っとけばいいのに。 ひょっとしたら私は一生この店を南アルプスの天然水を出す西宮の変なラーメン屋と誤解していたかも知れないのだ。これは大変な事である。

どうでもいい事を真剣に喋り、大事なことを付け足しのように喋るけったいなおばちゃんの店だったが、私の口にした水とラーメンは絶品だった。

報われたような、報われないような。とにかく変なお店でした。アーメン。




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