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20年以上愛用した我がCXですが、初春の或る日エンジン再スタートに際し外気温が低い事もあってか突然モウモウと白煙を吐き出し、その尋常ではない状態に仰天しました。幸い自宅近くでしたのでエンジン回転を極力押さえ、這う様に帰り着いたものです。『寄る年波には勝てず』と言ったところでしょうか。 主たる原因はガスケットの経年劣化で、LLCが燃焼室内に漏れて高温に晒され水蒸気となって猛然と吐き出した事でした。エンジン高回転中でもなく、況してやオーバーヒートでもない状態下での『突発的なガスケット吹き抜け』が今回のテーマです。 @仔細に点検するとLLCが約4000ccほど減少し、これがシリンダー内で沸騰蒸発して白煙となったものと推察します。幸いエンジンオイルにはLLCの混入は見られません。当日も正常に走行し、2時間ほど駐車した後にエンジンを掛けるとアイドリング中に突然上記の症状が発生しました。自宅近辺でしたので1km弱を低速運転で帰りつきました。オーバーヒートの兆候も無く、オーバーレブをした訳でもありません。5年程前にラジエターホースの亀裂からオーバーヒートの経験はあるものの、エンジンはそれ以降も正常に作動していました。日常の運転でも手荒く扱う事は無く、エンジン本体の不調は未経験でした。エンジンオイルや冷却系の管理も完璧で、エンジンに過大な負荷を掛ける事などもありません。原因としては過去のオーバーヒートの後遺症も影響皆無としませんが、20年以上もの長期間の使用にヘッドガスケットが自然劣化したものと推察できます。旧車の≪ヘッドガスケット吹き抜け≫は特殊な状況下だけでなく、日常使用中にも≪突発的に起こり得るもの≫と再認識した次第です。(写真1〜2)
Aエンジンを開けてしまうのですからパーツ入手に際してはプロの意見も伺い、何をどれだけ揃えるべきか≪充分な事前の調査≫を怠らない事が後々の作業を円滑に運ぶ為の絶対条件です。ネットで捜した結果、今回は早急な入手を念頭に価格は無視。在庫を持ち、なを且つレスポンスの早いスペインのI社に決めましたが、発注してから待つ事2週間、珍しく?適合部品のガスケットキットが無事届いた次第です。 (写真3)
Bいよいよヘッドを開けての確認作業となりますが、予想通りガスケットの一部が破損してシリンダー内にLLCが侵入した形跡がありました。幸いエンジンオイルの混入は無かったものの、専門家の意見に従い念の為≪ヘッドの面研やバルブ関係の擦り合わせとガイドのメンテナンス≫に出すことを決心しました。写真は1番シリンダー左端のガスケットが老朽化して抜けた様子のアップです。(写真4〜5)
C当日は最近我がCX専属メカ!の様相を呈した<茶や>さんやレース用エンジンのスペシャリスト<PP技研>の技術主任・霜島氏も参加され万全の体制です。オイル上がりも無く、カムの偏磨耗も無し。各シリンダー間の亀裂の症候やシリンダースリーブの段付きも無く、ガイドの磨耗による若干のオイル下がりは見られるものの総じて健康。シリンダー・ボアの専用測定器などを使用してブロックの詳細を確認。メンテナンスメニューを確立し、専門工場にヘッドのメンテナンスを依頼することにして一旦終了です。ギャラリーには御近所の修理工場のメカも覗きに来り、大の旧車愛好家にして、オールドバイクの収拾家でもあり、ダイハツ・ミゼット(旧車)を看板に駒沢公園のアイスキャンデー売りで有名なI氏も顔を見せるなど賑やかでした。(写真6〜7)
D数日後、ヘッドのOHをお願いしたPP技研からバルブを取り出した写真が送られてきました。自分自身でも仰天する程カーボンの堆積が認められ、オマケに排気バルブの煤も相当なものです。日頃から完全燃焼を心掛けるようなアクセルワークを意識していたのにこの有様。これで燃料が粗悪だったり丁寧な運転を心掛けていなかったら給排気も侭ならなかったと思います。20年間の汚れ、侮り難し…です。(写真8〜16)
E次の作業に掛かるまで暫し時間が有り、交換する予定のドライブベルトハブとエンジン・アッパーマウントを『シューグー』なる靴底修理用品で補強してみました。破損してからでは強度的に不安が残るので、取りつけ前の新品を補強したものです。これまでの経験からゴムの弾性不足で即刻破損する事が判明しているので、衝撃吸収用の穴は不要と判断しました。エンジンアッパーマウントも同様に補修。新品パーツを補強するなど邪道かもしれませんが、経験上ゴム部品に関しては信頼がおけませんので致し方の無いところです。ゴムパーツを交換すると音が静かになる事も事実で、ゴム製ダンパーのヘタリなどがあると当然ガタが出て、関連機器のon/offの際に騒音を発する事が想像できます。ヘタリが進行して<ゴムの亀裂>までに至ると最終的には金属同士が接触し、大きな騒音の発生源になる事は御承知の通りです。(写真17〜20)
F過去にエンジン上部用のゴム製ダンパーに亀裂が入り、センターピースが抜けたアッパーマウントを御紹介します。ご覧の通り見るからに頑丈そうで立派な造形ですが、肝心のダンパーゴムは脆弱そのもの。この時代のフランス車のゴムや樹脂の品質の悪さには何時もながら泣かされますね。価格の割に耐久性がサッパリで、幾つ交換したことか…。今でも改良の跡が見られず、当時そのままの製品が流通しています。一連の<ゴム系自作作戦!>の一環としてシリコンゴムで造ってみましたが、気になる耐久性はアンダーマウントやミッションマウントに比べると、発信停止やエンジンブレーキの際に想像を絶する前後のストレスが掛かり、耐用はオリジナルと変わらず2年が限度でした。言い方によってはオリジナルと対等の耐久性とも言えますね。しかし費用対効果は絶大なものがありましたので、高弾力で耐久性のある素材を見付け次第、これに凝りずに再挑戦する積りです。今回挑戦した上記『シューグー』の効果や如何に?これで補修するアッパーマウントの耐久報告は、後日のお楽しみと言う事に致します。(写真21〜22)
GヘッドのOHをお願いしたPP技研・技術主任の中間報告によりますと、ボアのマイクロメーターでの綿密な計測では脅威的な数値が出た由。何と20年以上愛用しているにも関わらず、シリンダーの消耗は限りなくゼロ!に近いとの事で、真に驚嘆されていました。偏にシトロエンのエンジン工作精度の高さを証明するもので、材質の良さと設計の正しさでもありましょう。オイル管理の重要性は言うまでもありませんが、特別高価なオイルを使用してきたわけでもなく、各種の添加剤とも全く無縁です。メーカー指定の5000km毎の交換と10000km毎のフィルター交換を守った結果ですが≪極力スムースで無理の無い運転≫が相乗効果を上げたと考えています。前出技術主任の言によりますと、『見えない所の手の込んだ設計に感心』されていた事も付け加えておきます。その一例を挙げると『加工の難度と複雑な工程が必要にも関わらず、バルブリフター(バケット)のオイル孔が斜めに穿孔してあり、カムの潤滑に細心の心配りが伺える』など、氏の長い機関加工の経験でも空前絶後との事でした。(写真23〜24)
H翌週、ヘッドを開けた時に発覚し交換したバルブリフター(バケット)です。カムとの接触面に虫食いが発生していました。8本中の3本に見られた症状ですが、プロの意見では『焼入れのバラつきなどで発生したもの』との事でした。確かに給排気には関係無く発症しているので熱による影響ではなさそうです。それにしても工程が複雑になりコスト上昇が避けられないにも拘わらず、オイル孔を斜めに開けてカムの潤滑に細心の注意が払われるなどシトロエンの良心的な設計の見本であり、結果的に長寿命に繋がる好例です。この発覚により『事前準備怠り無し』と胸を張ったのも束の間、急遽バルブリフター(バケット)を捜す羽目に…。超特急の入手を眼目に、不安は残るものの初体験でアメリカに!パーツを発注しましたが、発注後僅か5日で到着しました。開梱するや部品の外箱にはプジョーのマークが!、一瞬<発送ミス>が脳裏に浮かびました。しかし中身は目出度くシトロエン純正パーツで、安堵に胸を撫で降ろしたものです。パーツ入手には何時も苦労をさせられるヨーロッパ諸国に比べ、アメリカンビジネスの真髄を見た思いでした。(写真25〜26)
Iヘッド降ろしの為の下準備です。順を追って御紹介します。(写真a~d)
J以下はヘッドオーバーホールの実施状況。エンジンブロックのタップを切り、ヘッドボルトをダイスでさらい、砥石で面研するなど、ひたすら根気を必要とする仕事です。巷間言われるオイルストーンでの面研より、水研ぎ用の砥石のほうが格段に作業効率がよい事を教えてもらいました。研ぎ終わったら充分に水分の始末をすれば問題は起こりません。この機会に交換したものは、インジェクター・各種ベルト類・ドライブベルトハブ・エンジンアッパーマウント・エンジンオイルパン・各ボルトナット類(緩み防止タイプ)・ガスケット各種・Oリング等々、20年振り、始めてヘッドを開けた序にと予想外の多技に亘りました。(写真27〜50)
Kヘッド・オーバーホール完成なったエンジンルーム。外観も心なしか輝いて元気に復活したように見えます。(写真51〜56)
如何でしたか。現代ではエンジンのオーバーホールなど無縁になり、心臓外科手術?を体験する機会など滅多にありませんが、実施後の≪機関刷新感覚≫は実に新鮮な驚きでした。バルブやガイドの精密な機械部分の慣らしが進むに従い、日に日に軽くなるのが実感されて『愛着ひとしお』と言ったところです。計画を練り、根気は要るものの機会を見てタペット調整感覚でトライするのも一考です。充実した達成感は何物にも変え難く、初期性能回復・予防的メンテナンス・得られる安心感…は格別です。 ≪ヘッド・オーバーホール≫是非皆様にもお奨め致します。 |
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