シトロ菌感染記録
−シトロエンノススメ−


その16 スターターモーター・オーバーホールとバッテリーケーブル増設


ヘッドOHに引き続き今回はスターターモーターのOHです。日常使用で特に具合が悪いと言う事も無いのですが、渋滞を長時間走った後や高速走行後の再始動に際し、稀にスターターが回らずエンジンが掛からなくなると言う症状が出ます。メインスイッチを捻るとリレーの作動音が『カチッ』と聞こえるのですがモーターが回らないと言う症状です。ボンネットを開けてエンジンルームの温度を下げ暫くすると何事もなかった様に掛かるのです。遠隔地でのエンジン始動に不安を感じ、OHを実施しました。


@症状から、スターターリレーの接点が経年磨耗で接触不良を起すものと推測し、交換のため予備のモーターをOHすべく開けてみました。こちらのモーターも10年以上使用したものでメーカーはPARIS ROHNE。以前に交換した理由はトルク不足で冬場の始動には役不足と感じたからです。開けた結果、果たしてリレーの接点が磨耗して接触不良を起している事が判明。接点は銅製でドーム型をしていますが偏磨耗しています。幸い両接点共ドーム型の接触面である内側半分だけが減っていたので、夫々180度回転させて接触不良の原因を解消しました。ブラシは始動時に極短時間だけの使用なので消耗は僅かである筈と解釈して未交換です。内外を綺麗にして稼動部分に給油脂を行い、再組み立てで完了です。(写真01〜03)

  


A分解したPARIS ROHNE製リレースイッチ部の詳細を御紹介します。メインスイッチの始動電流がリレーに流れてコイルに通電すると磁石になって中の鉄心に繋がったT字型接点がコイルバネに逆らって突出し、バッテリー直結端子のドーム型接点を導通しモーターに大電流が通じます。同時にこの鉄心にリンクしたアームを介してピニオンギアが飛び出してエンジンを始動させる仕組みです。点検の結果、銅製の接点が長期間の使用で虫食い状態に電蝕されて接触不良を起していました。エンジンルームが高温になると接点の圧着が不充分となり、電触による通電不良とも重なって始動モーターが回らないことが伺えます。両接点ともに600番ほどのサンドペーパーで磨き、接点復活在を吹きつけて、シャフトやレリーズレバーなどにはグリスを塗りつけておきます。(写真04〜13)

         


B3本のネジを外してリレーボディを開けます。中には磁石に引き寄せられる太い鉄心とコイルバネがありますので、動きが良くなる様にグリスを塗っておきます。(写真14)




Cアーマチュアを点検する為に、ボディを開けると少なからぬ土砂!が出てきました。シャフトを支える後部カバーの密閉の悪さが原因です。カバー周囲にバスボンドを塗り付けてシール効果を狙いました。折角苦労して取り出したのですから、各部の組みつけには振動での緩み防止策として、新たに平ワッシャーと菊座金を入れました。ピニオンギアの飛び出し寸法を調整するには写真中央の黒い縁のあるボルトを回して行います。(写真15〜17)

  


Dいよいよ予備のモーターに交換すべく何時も通り我がCX専属メカ!茶屋さんの応援を頼み早速作業に取り掛かります。バッテリーの電源端子も外し、準備万端整えて自宅車庫でジャッキアップ、交換用のOH済スターターモーターも用意していざ開始です。(写真18〜19)

 


E最初に、オルタネーターの遮熱板が共締めになっているので、オルタネーターの固定ボルトとベルト調整ボルトを緩めておきます。(写真20)




F次にオイルパン横のエキゾーストパイプ・クランプを外し、マニュホールドから4本のボルトを抜いてExパイプを切り離しますが、切り離したパイプは回転させて下向きに伏せておけば安定します。これで作業空間が確保でき、アルミ製のオルタネーター遮熱板を取り外すのですが、その前にアルミ製遮熱板に直角に取り付けられたブーメランの形をした鉄製の遮熱板を10mmボルト2本を外して取り除きます。アルミ製のカバーはオルタネータ左端に固定されたネジ1本と8mmボルト3本を抜いて引き出します。(写真21〜24)

   


Gオルタネーターが剥き出しに成った処で、配線を外します。バッテリーからの太いワイヤーとオルタネーターへの接続線、それとメインスイッチからのリレー作動用のリード線です。モーターへの給電用コードも外します。(写真25〜26)

 


Hオルタネーター本体の固定ボルト上下2本とピニオンギアのカバー部固定ボルト3本を右側から抜いてオルタネーターを取り外します。本体の上部固定ボルトはレンチが入り難い上に、給排気の両マニュホールドに被われて直接見る事が出来ませんのでフレキシブルアタッチメントなどを利用して外す工夫が必要です。またオルタネーターは予想外に重いので落下には充分な注意が肝心です。外したスターターモーターにはDUCELの銘板が付いていました。(写真27〜29)

  


I外した後はポッカリと穴が現れ、リングギアも覗けます。配線の不具合が無いか、各部の緩みが無いかなど、この際慎重に点検しておけば安心です。普段手が入り難い場所なので、ついでにオイルや泥濘で汚れたエンジン下部も綺麗にします。


J事前にOHしておいたモーターの取り付けですが、取り外しの逆順でOK。本体は先に配線をしてから取り付けた方が容易です。今回、作業を逆にしたので作業空間が狭すぎて配線がママならず、折角取り付けた重いモーターを再度外す羽目にあいました。配線は大電流が通る事を念頭に、既存の配線も生かしつつ、バッテリーからの給電をダブルワイヤーにモディファイしました。無論振動・緩み対策に菊型ワッシャーを噛ませてガッチリ固定、錆びたナットはステンレスナットに交換しました。(写真30)




KOHに先立って自作した始動モーター用追加配線の極太ワイヤーです。近所のホームセンターで見つけたゴム被覆の『溶接用』ですが、大電流にも充分対応できて安心です。バッテリーブースターケーブルでの代用も考えたのですが、見た目が太いだけで肝心の中心銅線が細くて抵抗が多そうです。溶接用は存外軟らかさもあって狭い空間を這わせるには好都合でした。ただし、排気管の真裏を通す事から、耐熱性に不安無しとせず、念の為に耐熱用のコルゲートチューブを被せて万全を期しました。電源用の平型端子は大き過ぎ手持ちの工具が役不足でしたので、ペンチで潰してハンマーで叩き、半だ付けで完璧を期しました。(写真31)




L本来であれば『これで目出度し』となる筈ですが、とんだハプニングが…。取りつけ完了後にスターターを回したところ何とモーターに力がありません!何故?。@の『ブラシは始動時に極短時間だけの使用なので消耗は僅かである筈と解釈して未交換』が祟りました。OH後に単体でテストした時には見事リレーも元気良く作動してモーターも回り、『復活』と判断したのですが、負荷の掛からない状態では正確にトルクが回復したか否かが判断出来なかったのです。このトルク不足が原因で以前交換した筈なのに、すっかり失念しておりました。ブラシの接触不良を点検せずに組み込んだ事が直接的な原因と考えています。長期間の保管も重なり動きが渋くなって全てのブラシが正確に接触せず、正規の電流が流れないのです。当日は時間の制約もあり、PARIS ROHNEの再OHをしたところで、原因の特定→確認・修理→テストは不可能と判断し、急遽これまで使用していたDUCELの接点不良の修理をして元に戻す事を決意しました。またまた最初からやり直しで、2時間の格闘が無駄に…ヤレヤレ。


M外したばかりで汚れ放題のDUCEL製オルタネーターです。サイズは若干小さくなっていますが取り付けには問題無し。後日調べたところではターボディーゼル用と判明しました。PARIS ROHNE製に比べると構造がシンプルで合理的に感じられます。 (写真32〜33)

 


N気を取り直して早速原因であるスターターリレーのOHの掛かります。全体のサイズや重量もコンパクトに変更されていますが、特にリレーの構造が異なります。トルクスネジ3本を外して開けようとしますが、開きません!他にネジやリベットなどは見当たらず暫し困惑です。PARIS ROHNEは旧来からの六角ネジ3本で簡単に開いたのにと考えあぐねて小1時間。力任せに開けて壊しては<元の木阿弥>と遂に諦めかけた時、何気なく端子を見ると半だ付けの跡があります。ひょっとしたらこれが開かない原因かと、半ば自棄気味で半田鏝を持ち出し溶融したところ、アラ不思議!簡単に開いてくれました。中のコイルの銅線を直接外部端子に半だ付けして固定するなど、まさにラテン的発送で、我々凡人の感覚では考えられず大いにてこずった次第です。(写真34〜38)

    


O接点をサンドペーパーで丹念に磨き、接点復活剤を噴射して組み込みますが念の為にT字型突出端子もひっくり返して導通に完璧を期して完成です。半だ付けする部品が大きくて小電力の鏝では苦労しますが、我が60W大古品の半田鏝の活躍で端子との結合も無事完了です。モーターへの給電用配線取出し口のゴムブッシュが老化してひび割れを起していましたので『バスボンド』で修理して完成です。これで『二重配線、二重の苦労!?』も見事実り、元気良くスターターモーターが回るようになりました。(写真39〜41)

  


追) バッテリーから始動モーターへの配線をダブルにした効果は頗る顕著で、体感上はモーターの回転速度が倍近く上がった如くで、エンジン始動は文字通り『一触即発』になりました。副次的効果としてバッテリーやスターター機構への負担軽減が見込まれ、関連部品の寿命も延びそうです。温暖な時期にはそれほど恩恵を感じないかもしれませんが、寒冷期には大変実効あるモディファイです。材料も安価であり、車にとっても優しく懐にも優しいとあっては言うこと無しですね。 我がCXはエンジンへのアース線は既に極太ダブル配線に改造してありましたが、大電流を必要とするのは始動時ですから、モディファイを計画される向きは始動モーターへの2重配線と共にエンジンへのダブルアースも是非お奨めします。これに味を占め、後日ボディ(フェンダー)へのアース線増設をした事は言うまでもありません。


長期間使用したスターターモーターは気が付かないまま徐々に初期の性能が低下しているものです。モーター内外を綺麗に清掃してオイルやグリス、スプレー潤滑剤などを利用してメンテナンスをする事で元気を取り戻す事が可能です。 冬場の始動性向上は愚か、バッテリーや電気関係部品、各摺動部への負担軽減など思わぬ波及効果も得られます。時間の余裕を見て是非挑戦してみてください。


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